予防的な卵巣卵管摘出(RRSO)の判断

さて、一番悩んだのが卵巣卵管摘出の判断でした。

以下の記事で書いたとおり、HBOCの場合は乳がんだけでなく卵巣がん等の発症リスクが上がる、かつ卵巣がんの方が見つけにくいため、予防的摘出を検討する余地があるとのこと。

もしBRCA1に変異があった場合は40歳時点での卵巣がんの発症リスクは5%以下ですが、50歳時点では約10%。発症率が低いとは言え10年で2倍になるわけです。そして60歳では20%超、70歳では約40%。倍々ゲームですね。

上記の結果を踏まえるならば、当然できるだけ早く摘出するのがいいと思われますが、早期に取ることによるデメリットもあるのです。

それが閉経とのタイミングです。
当然ですが、卵巣・卵管を取るわけですから生理はなくなり閉経します。

一般的に平均的な閉経の年齢は50歳前後だそうです。
私はこの時点で47歳。自然な閉経までは平均的な場合はあと3年あるということになります。

閉経すると女性の身体には様々なデメリットが生じます。早期の閉経ではそのリスクが上がるのだとか。例を挙げると骨粗鬆症や心血管疾患のリスクが上昇するとのこと。

そのため、取るメリット(卵巣がんが発症するリスクが減る)と、デメリット(骨粗鬆症や心血管疾患リスクが増える)を判断して決めなければいけないことに。

G先生からは「乳がんの手術と同時ではなく、50歳になってから取るという選択肢もあるよ」と言われます。

この辺りは、病院からもらった資料だけでも不十分なので、徹底的に調べることにしてみました。

1.日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン

まずは日本の乳癌学会のガイドラインをあたってみます。

疫学・予防【目次】 | 乳癌診療ガイドライン2018年版
乳癌診療ガイドライン「疫学・予防」の目次です。 推奨の強さ/エビデンスグレード(疫学・予防の領域に限り採用)/推奨決定のためのアウトカム全般のエビデンスの確実性(強さ) は こちら をご参照ください。 【 疫学・予防 】 エビデンスグレード 推奨の強さ リンク BQ CQ FQ 項目 1 2 3 4 ...

その中にBRCAに異常がある場合の予防的な卵巣卵管摘出(risk-reducing salpingo-oophorectomy : RRSO)について勧められるか?というトピックがあります。

上記のサマリーは「BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異をもつ挙児希望のない女性に対してRRSOの実施を強く推奨する。〔推奨の強さ:1,エビデンスレベル:中,合意率92%(11/12)〕」ということでした。推奨の強さ、などの読み方は以下のリンクを参照いただければと思いますが、強く推奨されるレベルのようです。

上記の記事から私が理解した限りは、RRSOをすることで、卵巣卵管の癌発症リスクはゼロになるそうです(ただ、腹膜癌については発症の可能性は残るとのこと)。つまりRRSOをすると卵巣がん卵管がんのリスクは減らせます。

そして上記の記事によると有意な全死亡率の低下が研究結果で示されているようです。

ただ、早期閉経により更年期症状の発症、エストロゲン欠落症状による心血管障害、骨粗鬆症のリスクについては言及されていますが、まだデータは不十分でないとされながらも、総合的な評価としてはRRSOについては便益の方が上回るという評価のようです。

そのた、子どもを望まない、RRSO後の有害事象について適切な理解が得られているという条件下においては、RRSOが推奨されるようです(必ず引用元を確認ください)。

2.遺伝性乳がん卵巣がん症候群の保険診療に関する手引き

実は画期的なことにですね、HBOCですでに癌が発症している場合、予防的に乳房を切除すること=リスク低減乳房切除術(RRM)およびRRSOは2020年4月から保険適用になったのです。しかも、前の記事でも書きましたが、そもそもBRCAに変異があるかを調べる遺伝子検査も保険適用になったのも2020年4月と、たった半年前。

ありがたいのはさておいて、ここで言いたいことはそれではないのです。

2020年4月に保険適用が開始になるにあたって、一般社団法人 日本乳癌学会将来検討委員会とHBOC 診療ワーキンググループ規約委員会が発表した「遺伝性乳がん卵巣がん症候群の保険診療に関する手引き」です。

こちらの文書の2ページには「RRMは40歳までにRRSOは50歳までに実施することが勧められます」と書かれています。

つまり、本手引きによるとRRSOは閉経前の50歳前までに実施することが推奨されていることとなります。

3.NCCN ガイドライン

さて、国内のガイドラインだけでなく、海外のガイドラインも確認してみます。

https://www2.tri-kobe.org/nccn/から引用すると、「NCCN Clinical Practice Guidelines in OncologyTMは、全米を代表とするがんセンターで結成されたガイドライン策定組織 NCCN(National Comprehensive Cancer Network)が作成し、年に 1 回以上改訂を行い、世界的に広く利用されているがん診療ガイドライン」だそうです。

上記のサイトでは、NCCNガイドラインの日本語訳を提供してくださっています。

こちらのサイトの中から、「乳がんおよび卵巣がんにおける遺伝学的/家族性リスク評価」を確認します。

スライド数が非常に多いですが、上記ファイルの14枚目、右下の「BRCA-A 1 OF 2」というページをご参照ください。

列挙されている中の真ん中あたりにRRSOについて以下のとおり言及されています。

「リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)は、典型的には35~40歳で最後の出産が終了し次第施行することが推奨される。(中略)BRCA2の病的バリアントの保持者において卵巣癌リスクを管理するためのRRSOを40~45歳まで延期することは妥当である」

つまり、NCCNガイドラインにおいては、どうやら40歳前半でもRRSOは推奨されているようです。

もちろんそれ以外について様々なことが書かれているので、上記のページは必ず直接読んでください。日本語ですからね。

4.早期閉経の心血管疾患リスクの高さ

ただ、これまで紹介したサイトでは心血管疾患のリスクの高さには十分言及されていません。

さらに調べる必要があると感じて、HBOCやRRSOということはいったん脇に置いて、単純に「閉経+心血管疾患」で検索してみると、以下の記事がヒットしました。

-閉経が早い女性は心血管疾患になりやすい? ホルモン補充療法をご検討ください。-(ナビタスクリニック)
https://navitasclinic.jp/archives/blog/4100

この記事の中にある医療系論文雑誌「THE LANCET」の論文を直接あたることにしました。

DEFINE_ME

非常に長い論文ですが全部を読む必要はありません。
冒頭のSummaryの中のFindingの英語をGoogle翻訳なりDeepL翻訳なりで日本語に訳して読んでください。

結果としては、50~51歳よりも若い年齢で閉経した場合は、心血管疾患になるリスクは高いようです。おそらく年齢が若いほどリスクは高くなるようです。

私はサマリーを確認しただけで全文を精査していませんので、私がここに書いた内容は不十分な内容な可能性があります。ご自身やご家族が該当する場合はきちんと引用元をお読みください。

画像は北京の世界遺産「頤和園」です。

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